モリブデン酸とマラカイトグリーンのポストカラム誘導体化法を用いるイオン排除型イオンクロマトグラフィー／吸光光度法による河川水中オルトリン酸とケイ酸の同時定量

摘要

リンは，窒素と並んで植物プランクトンの栄養塩類であり，農業用肥料，家庭排水や工場排水等の人為的発生源を主な起源とする．流域から河川を介したダム湖や内湾等の閉鎖性水域へのこれら栄養塩類の過剰な負荷は，アオコや赤潮といった藻類の異常増殖を引き起こし，上水の異味異臭や魚類の舞死等の環境問題につながることから，流域全体の負荷削減に向けた各種排水の濃度管理や総量規制が行われている．他方，岩石の風化を主な起源とするケイ素は，植物プランクトンのケイ藻類にとって重要な栄養塩類である．近年，河川水中ケイ酸濃度の長期的な変化が河口及び沿岸域での植物プランクトンの種構成を変化させている事例が報告されており，水質規制のない物質でありながらも，生物地球化学的物質循環における動態や影響を解明する上で重要な水質項目の一つとして考慮される必要がある．