風除染装置としての可搬型噴流ノズルの適用可能性に関する基礎実験

摘要

本研究は，多数の被災者が除染対象となるNBC(核生物化学)テロリズムが発生した際を想定し，ウォーム·ゾーン/コールド·ゾーンでの基本的な対応である乾的除染法に加え，ホット·ゾーン/ウォーム·ゾーンでの救助活動にも適用可能な可搬型噴流ノズルを用いた簡易且つ局所的な除染方法の可能性に関して検討する.筆者らは，これまで全身を対象とした除染方法である風除染システムの開発に関して，産業用エアシャワーを発展させたプロトタイプモデルを制作し，実験とCFD解析を併用することで，風除染を適用した場合の除染効率の定量評価を行ってきた.その結果，全身用の風除染システムは一定の除染効果が期待できることが確認できたものの，装置が大型であり，現場への迅速な可搬性能に関する課題が残されていた.本報では，救助隊の常備品の一つである可搬型噴流ノズルを用いた局所的な風除染の可能性に関して，簡易除染法としての適用可能性検討に加え，使用時の目安となる除染時間-適用距離(除染距離)と除染効率の関係把握を目的として，基礎実験を実施した結果を報告する.特に，性能検討の第一段階として，人体付着汚染物質として液状(水)と粒子状（JIS試験用粉体：関東ローム)の模擬汚染物質を用いて，局所的な風除染効率の評価を行った結果，80%以上の除染効率を得るためには10cm锃度の至近距離で使用する場合においても，液状の場合に3分以上，粒子状の場合に10秒程度の時間が必要となることを確認した.