需給調整市場設立後を想定した電力システムにおける 調整力価格の分析に関する研究

摘要

東日本大震災とこれに伴った原子力発電所での事故を契機に, 日本政府は電力の安定供給・電気料金の低廉化・需要家側の選択肢と事業者側の事業機会の拡大を目的として, 電力システム改革に取り組hでいる. 主な改革内容は, 広域系統運用の拡大・小売および発電部門の全面自由化・発送電の法的分離である. これらの改革に伴い, 従来総括原価方式で行われていた周波数調整などのアンシラリーサービスは, 需給調整市場からの調達という形へと変化する. また, 近年の再生可能エネルギーの増加に伴って, それら変動電源の出力の変動を吸収できるような, 調整力の確保は, 今後の日本の電力システムにおいても, 考慮すべき課題の一つになっている. そこで, 本稿では, 需給調整市場設立後の日本の電力システムを想定し, 各資源がどのような考えでオファーを行うかについて紹介する. また、起動停止計画と需給調整シミュレーションを通じて, 日本の電力システムの近い将来の調整力の価値を定量的に評価する. . 現在, こういった調整力を確保する手段として, 燃料電池をはじめとするコージェネレーションシステムや, 蓄電池や電気自動車をはじめとする貯蔵資源などを対象に様々な研究がなされており, 実際にエネルギー分野への進出を考えている事業者もいるが, 日本の電力システムの不確実性を懸念している場合が多い. 本研究の意義は, 一連のシミュレーションを通じて, そういった事業者が疑問を感じている調整力市場というものがどのような挙動をしそうかということを考察するのが狙いである.