紫外線発光ダイォードによる高分子推進剤の光解離反応を利用した低電力推進機の開発

摘要

本研究では，UV-LEDと固体ポリマー推進剤を用いた小型宇宙推進機を開発するため，その推進性能を検証する実験を行った.(1) ナイロン6およびPVC推進剤に対して，真空中で連続6時間のUV-LED照射を行い，照射前後の推進剤質量を測定した.この結果から，主に光解離反応による推進剤質量消費を確認した.(2) ねじり振り子式スラストスタンドを用いて真空中での推力測定を行った.この結果から，UV-LEDを照射することにより，ナイロン6およびPVCのいずれの推進剤でもサブ μNオーダーの推力が生じることを確認した.(3) 推進剤としてPVCを用いた場合，ナイロン6に対して優れた推力を生じることがわかった.また265nmのLEDを用いた推力測定より，短波長のUV光子の照射が推力電力比の改善に有効であることが示された.各ポリマ一推進剤およびLEDを用いた際に発生する推進性能の差異は，ポリマー表面で生成されるガス種およびその排気エネルギーに起因すると予想される.したがって今後の研究課題の一つには，紫外光照射時に各種ポリマー表面で生じる排出ガス特性と推進性能の関係を検証することが挙げられる.