安定液の劣化が造壁性とスライム発生量に与える影響

摘要

地中連続壁や杭工事において，安定液は掘削孔の崩壊防止を目的として使用されている。いずれの工事においても，安定液に置換する形でコンクリート打設が実施されるが，その際にセメント由来のカルシウムが混入し，安定液中の粘土成分が凝集して劣化につながる。安定液の劣化は，造壁性（孔壁に薄い泥膜を形成し，安定液圧を掘削壁面に伝える性能）の低減や，スライム残留によるコンクリート打設不良を起こすため，安定液劣化に関する品質管理は重要である。品質管理手法としては，造壁性はAPI 規格のろ過試験（API 試験），粘度はファンネル粘度計，スライム量（砂分率）は砂分計等で測定されている。それぞれの性状は互いに影響しており，どの程度カルシウムが混入すると凝集が起こるのか，造壁性やスライムにどのような影響を与えるのか把握することは，計測値を評価する上で重要である。本報は，セメントを添加して模擬的に凝集させた安定液を用いて，安定液の劣化が造壁性やスイライム発生に与える影響について調べた結果を報告する。