境界積分方程式法を用いた移動する受音点での可視化・可聴化について

摘要

本報では３次元空間上での音場の再現と可聴化について考える. 樫山らの先行研究[1] [2] では, 幾何音響理論に基づき, 音源から受音点までの距離と音の伝搬経路から音圧パワーレベルを算出し, リアルタイム可聴化を実現している.しかし, 様々な形状の複数の散乱体が存在するような音場では, 音の伝搬経路を見い出すことは困難であり, 正確な音場の再現には限界があった. この問題を解決するために波動音響理論に基づく音場解析を考える. 波動方程式を解く数値解析手法は様々存在するが, 本研究では, 時間域の境界積分方程式法を用いる. 境界積分方程式法は波動解析に有効な手法といわれており, また, 境界量を予め境界積分方程式法で計算しておけば, 領域内部の任意の点での音圧はたたみ込み演算のみで計算できるという特徴を持つ. 本研究は移動する受音点におけるリアルタイム可視化，可聴化の実現を目的とし, 領域内部の音圧のたたみ込み演算の計算時間の短縮を試みる.