脳動脈癌治療用多孔薄膜カバードステントの開発（薄膜留置効果の予測と孔形状の最適化）

摘要

我々は，脳動脈癌の治療法として従来のクリッピングやGDC に代わる新しい治療用デバイスとしてカバードステントを開発している．これは，Ni-Ti製ステントストラットをポリウレタン製フイルムで覆い，そこに直径数百μmの円型孔を多数設けることで，ステント留置後の内腔面に血管内膜組織を形成し，円型孔を介して血管内皮細胞が内腔面に移動しやすくすることで過剰な肥厚を抑制している．過去の動物実験で，微細孔開口率を12.6%から23.6%に倍増させることで、確実な癌塞栓能を維持しながら過度な内腔肥厚を抑制できた．さららなる開口の増加でより早期の内皮化完了が期待できるが，血液流入増加による塞栓性能の低下が懸念される．そこで，より大開口のカバー薄膜による癌塞栓を目指し，孔直径と開口率を系統的に変化させた多孔薄膜モデルを2次元動脈癌モデル開口部に設置し，生理条件下で癌内流れの可視化計測を行い，その留置効果を定量的に調べた．