容積型ポンプの非対称性が内部流れに与える影響の数値シミュレーション

摘要

近年，我が国では心臓や血管に関する病気が急増しており，中でも心臓に関する病気は心疾患と総称されている．これは，悪性新生物，脳血管疾患と並hで日本人の三大死因とされている深刻な病気であり，心疾患患者は適切な診断及び治療を受けることが必要である．そのためにはまず心臓内の流れを精度よく調べることが重要であるが，心臓は形状の非対称性やねじれを伴う変形形態を持つため，流速計などを用いる臨床的計測法ではその解析が困難である．また，動脈硬化症などの心臓血管病の発症·進展のメカニズムに血行力学的なパラメータが関係しているとの考え方から，流体力学的視点による生体内流れに関する研究が幅広く行われている．そのため，周期的な拍動により血液流れの中心を担う心臓の内部流れを知ることは，他の心臓血管痛好発部位における流体力学的解析にも有用であると考えられる．そこで本研究では，数値流体力学を用いて左心室内流れの解析を行うことを目指す．本原稿ではその基礎として，周期的に拡張と収縮を繰り返す容積型ポンプを模擬した計算モデルを作成し，内部流れの解析を行う．また，拍動時の形態に非対称性があると内部流れにどのような影響が現れるかについて考察する．