振動刺激を用いた摩擦感呈示法－動摩擦の速度依存性に基づく摩擦振動モデル

摘要

近年，携帯電話や家庭用ゲーム機などにおいて，タッチパネルや加速度センサを用いたインターフェースの普及が進hでいる．これらのインターフェースは，タッチパネルのボタンにクリック感を与えることや，物体をなぞった際の触感を呈示することなど，入力に応じた触覚情報の呈示を行うことで操作性を高めることが期待できる．特に，何かをなぞる，動かすといった感覚には摩擦が大きく影響するため，摩擦に関係する触感を再現することは触感のリアリティを増すために重要であると考えられる．筆者らはこれまでに，指腹部で生じる固着·滑り現象に着目した摩擦感呈示法を提案してきた[1]．この手法では，触運動中の固着·滑り振動の観察を行い，指腹部で生じる固着·滑り振動近似モデルを構築することで，触運動情報を基に固着·滑り振動の状態の推定を行っている．しかし，我々の観測においては，固着·滑りを伴わない摩擦振動も観察されており，我々の提案してきた固着·滑り振動の近似モデルは実際の触運動に伴う振動現象をすべてモデル化できていない．そこで筆者らは，動摩擦係数の速度依存性を従来の固着·滑り振動近似モデルに導入することで，固着·滑り振動，固着·滑りを伴わない摩擦振動の2 つの振動を含むモデルが構築できることを確認した[2]．本稿では，指腹部接触面の観察結果と新たに提案したモデルを用いた解析の結果を比較し，モデルの妥当性について考察を行う．