マルチスペクトル画像を用いた赤緑色覚異常のための画像強調

摘要

赤色や緑色，橙色や黄緑色の区別がしづらいなど，色覚に特徴のある人は多数存在し，彼らは色覚異常者と呼ばれる．色覚異常者が混同しやすい色の組み合わせに対し，識別しやすいようにカラー画像を再配色する手法がいくつか提案されている．例えば，ウェブ環境で採用されているChromeDaltonization や，画像の色分布と強調後の見えの自然さを考慮したHuang et al.（2007）[1]の手法などがある．これらはRGB 画像に基づいた色覚異常者の見え表現手法（Brettel et al.（1997）[2]やMachado et al.（2009）[3]）を利用しており，基本的にRGB 値からCIE-XYZ 三刺激値を計算することによって実現される．しかし，CIE-XYZ 三刺激値は，正常色覚者の等色関数に基づいて計算されており，色覚異常の見え再現に適しているとは言い難い．これに対して，Yaguchi et al.（2018）は，マルチスペクトル画像を用いて色覚異常の見えをより正確に表現する手法を提案している[4]．マルチスペクトル画像とは，光の各波長における反射率を用いた多次元分光画像であり，光信号の空間的及びスペクトル的な特性をとらえることができるため，色彩科学の分野でも色測定や色再現などに用いられている．