リーマン空間の有効次元の定義と高次元リーマン計量の推定法及び表情空間の次元推定

摘要

表情空間など心理物理空間の次元は高いと考えられているため，次元削減が重要な課題である．現在では，次元削減を行うために主成分分析(PCA) や非計量多次元尺度構成法(非計量MDS) を用いることが多いが，これらの手法は物理刺激の性質のみ利用しており，主観知覚の情報は含まれていない．そこで本論文では，まず心理物理空間がリーマン空間であることに基づく有効次元の定義を与える．そして，低次元部分空間内のリーマン計量を使用した新たな次元削減手法を提案する．また，高次元空間におけるリーマン計量の困難さを解消するために，低次元部分空間内のリーマン計量を用いた高次元リーマン計量の推定手法も同時に提案する．この手法により，心理物理空間の有効次元を考察することが可能になる．具体的な応用として本論文では，JND(Just Noticeable Difference, 丁度可知差異)弁別閾値により定義される表情空間の有効次元を推定することを目標とした．