PDR推定軌跡の簡略化による経路理解の向上

摘要

近年, 屋内にいるユーザの位置情報を知ることはナビゲーションだけでなくマーケティングにおいても非常に重要な情報であり, 注目を集めている．しかし, 屋内でユーザの位置情報を推定する手法は初期整備が必要なものが多く, 初期整備の必要のないPDR はその測位手法の特徴から測位誤差が累積する問題がある．PDR による測位結果を補正する手段として, 他の測位手法を併用するものや, マップマッチングのような事前に用意した建物情報を用いるものがあるが, どちらも導入コストが増加してしまう．本研究ではPDR によって推定された移動軌跡を線分化, および直交化を行うことで簡略化するシステムを提案する．建物内に存在する通路は互いに直交している場合が多く, そこを歩行するユーザの移動軌跡も同じく直交したものとなる．すなわち, マップ情報を用意せずとも移動軌跡の補正を行うことが可能である．提案手法により, 推定軌跡を簡略化することで累積誤差を減らし, ユーザの移動経路を明確にする．評価実験として,店舗内を歩行するユーザの歩行軌跡の簡略化を行い, 軌跡の補正と誤差の計測を行なった．結果として, 補正された軌跡は簡素で移動軌跡が明確なものとなり, 約58 ％の誤差低減を確認した．しかし, 実験時に一回転するようなイレギュラーな歩行が見られ, その動作をプログラムでは正確に認識し処理することができず, 誤った進行方向へと補正されてしまった．