確率論的核化が種晶添加回分晶析の製品品質に及ぼす影響に 関する数値シミュレーション

摘要

過飽和溶液中で,結晶核は確率論的に発生すること が知られている．この確率論的核化によって,同条件 で複数回行われる晶析の過程が,その都度異なるとい う現象が観察される．特に一次核化の確率論的振る舞 いは著しく,多くの研究者によって一次核化の確率論 が研究されてきた．核化確率の研究の多くは,核化ま での待ち時間の分布を調べる手法をとっている．この 手法では晶析過程のばらつきを見ているが,応用上は 製品結晶のばらつきの要因になる．実際,核化の確率 論的振る舞いによる各因子のばらつきは晶析制御の課 題の一つであり,しばしばフィードバック制御などに より対策される．しかしながら,粒径分布などの結晶 製品品質の回分ごとのばらつきを考慮した研究例は少 ない．また,製品品質のばらつきは一次核化のみでな く二次核化の確率論的振る舞いの影響も受けることが 予想される．しかし,二次核化の確率論的振る舞いは 一次核化に比べて小さいと考えられており,二次核化 を決定論的に扱う研究例も多い． 本研究では,モデル物質の種晶添加回分晶析の仮想 実験において,一次核化及び二次核化の確率論的振る 舞いを考慮して,さまざまな操作条件で得られる製品 品質のばらつきを数値的にシミュレートした．