繊維構造物としてみた生体組織とその再生医療への応用

摘要

脱細胞化組織は、ヒトやブタなどの動物組織から細胞成分を除去したもので、皮膚や心臓弁などはすでに欧米で市販されている。脱細胞化法には、界面活性剤や酵素などを用いる化学的方法と圧力、凍結や浸透圧などを用いる物理的方法がある1）。我々は高圧化で細胞膜が不安定化される 現象に注目し、高静水圧を用いて脱細胞化組織を調製している2，3）。この技術は、著者が当時所属 していた国立循環器病センターの北村惣一郎総長を代表として2000年より開始された脱細胞化異 種生体弁の開発プロジェクトにおいて、同研究所の藤里俊哉博士（現大阪工業大学）が中心となっ て考案したものである。これまで、心臓弁、血管の足場材料としての応用、また近年では、小口径血 管、角膜実質組織再生、および骨髄組織再生等の検討を行っている。