光駆動水素製造の高効率化に資する可視光·近赤外線吸収色素の合成

摘要

SDGs の達成に向けた取り組みにおいて、環境·エネルギー課題の解決はその根幹に位置する。東京都は昨年12 月に「ゼロエミッション東京戦略」を策定し、再生エネルギー由来のCO2 フリー水素を脱炭素社会実現の柱にした目標を掲げている。太陽エネルギーを用いた水素製造は魅力的であるが、そのエネルギー密度が低いことから高効率な光捕集技術の開発が望まれている。特に、太陽光全輻射エネルギーに対する紫外光の割合が僅か5～7％であることを勘案して、可視光領域以上に吸収バンドをもつ有機色素を増感剤使用する光電極系や光触媒が盛hに検討されるようになった。四配位ホウ素系有機色素は、その優れた光学特性から有機エレクトロニクス、バイオイメージングなどへの応用が検討されている。われわれは、その関連色素であるボロンジピロメテン系色素（BODIPY）が単純な構造ながら可視領域に比較的強い吸光特性をもつことに着目し、π 共役拡張型誘導体の合成を通じて、光電変換デバイス用増感剤への適用を検討している。本講演では、それらを光水分解水素製造技術へ適用した試みを紹介する。