光電子分光法を用いたイオン液体の電子構造に関する研究(II)

摘要

イオン液体(IL)は低蒸気圧、高イオン伝導性、広い電位窓など通常の分子液体とは異なる様々な性質を示す。このような性質を示す要因の一つに静電相互作用が挙げられる。この静電相互作用の総和であるマーデルングエネルギー(EM)は、無機塩においてカチオン·アニオンのイオン半径とそのイオン半径比に依存する結晶構造によって決まる。一方でIL は液体状態にもかかわらずドメイン構造を有し、無機塩結晶の構造とは大きく異なることからEM についても無機塩と異なる傾向を有する可能性がある。しかし、詳細な報告はされていない。本研究では光電子分光法を用いて様々なカチオン·アニオンを組み合わせたIL の価電子帯の電子状態を調べ、EMのイオン種依存性を検討した。