多糖核酸複合体を用いた核酸医薬のDDS：その発見から企業化までの道のり

摘要

(1→3)-β-D グルカンの一種であるシゾフィラン(SPG)はスエヒロダケが産出する多糖である。SPG は天然では右巻きの３重螺旋で存在する。この３重螺旋はアルカリ溶液に溶解することにより、1 本鎖(s-SPG)に分離することができる。また、s-SPG のアルカリ溶液を中和することによって元の3 重螺旋に再生できる。この再生過程に核酸が存在すると、糖鎖2 本、核酸１本からなる新たな３重螺旋複合体が形成されることが見出された。（文献１－３）。我々は、この複合体の基礎的研究を進めるとともに、この複合体が核酸医薬のためのDDS として利用できることを示してきた。一方、活性化された抗原提示細胞には(1→3)-β-D グルカンの認識レセプターであるDectin-1が発現していることが知られている。（文献４）したがって、SPG 核酸複合体をもちいれば、Dectin-1 を標的として核酸医薬を選択的に送達できると考え、選択的な薬物送達システムの構築を試みてきた。