現象論に基づくSNDM強誘電体プローブデータストレージの再生信号強度に関する考察

摘要

強誘電体プローブデータストレージは記録密度向上に対する高いポテンシャルを有し，次世代の新たな記録方式として期待される一方，再生速度面において大幅な改善が必要であるといった課題を有する.本記録方式では，記録ビットである強誘電分極を読み出すために，媒体に微小交番電界を印加したとき時の非線形誘電応答を検出するといつた方法を採用しており，高速再生時に十分な信号雑音比を得るためには非線形誘電率の大きな強誘電体材料を媒体に用いる必要がある.そこで本稿では，強誘電体材料の非線形誘電率に関して現象論に立ち返り考え，これについて記録媒体応用の観点から議論した.その議論を通じて，非線形誘電率も線形誘電率や圧電定数と同様，キユリー点に近づくに従い発散的に増大するような挙動を見せることを示し，材料設計の観点からはキュリー点制御が重要であることを明らかにした.一方，非線形誘電率の増大と分極の安定性との間にはある種のトレードオフが存在することも分かった.この記録媒体応用に対して望ましくない状況を回避するためには，ピニングサイト制御が今後の一つの鍵となるであろう.