金属銅の木材腐朽菌に対する抗菌特性の基礎的研究

摘要

木材の生物劣化、すなわち腐朽やシロアリの被害は、雨水などによって湿潤した木材で多発する。そのため、橋梁や寺社などの伝統的建築物では、露出部材の突端を銅合金製金物（以下、銅金物）で覆い、雨水の侵入を防ぐという工夫がなされてきた。しかし、実際の建築物を調査すると、銅金物付近の木材の腐朽劣化は、金物の防水効果では説明できないほど広い範囲で、顕著に抑制されていた（写真1、2）。この現象は、雨水によって金物から銅イオンが溶出し、これが周辺木材の生物劣化の抑制に寄与したものと予想された。そのため演者らは、蛍光X線分析装置を用いて、京都三条大橋の青銅製擬宝珠のついた木製欄干を調査し、広範囲から高濃度の銅を検出している1）。また、木材に金属板を接触させた状態での木材腐朽試験を行い、銅板が木材の腐朽を抑制することを確認してきた2）。