津波による沿岸海域の土砂移動現象解明の意義と研究方法：予測のための基礎データ取得

摘要

大規模な津波が発生すると沿岸域では，土砂移動により沿岸侵食，港湾の局所洗掘?堆積，航路の埋没，陸上への堆積などの災害が起きる．原子力施設など沿岸部の発電施設にとっては，取水設備の閉塞の可能性があるため，南海トラフ地震などによる今後の津波を想定した海底での土砂移動?地形変化の予測は重要な課題である．津波による海底での土砂移動評価は，高橋ほかにより提案された掃流砂層と浮遊砂層の交換砂量を考慮した津波移動床モデルを基に進展してきた．近年では，流況による変化を考慮した飽和浮遊砂濃度式を導入した数値モデル(TUNAMI-STM)の検証が実際の地形変化と空撮映像により行われている．数値モデルの妥当性検証や予測精度向上には，できる限り詳細な観測結果に基づく実現象の解釈との擦り合せが望ましい．例えば，地形変化だけでは説明することができない粒径の大小による移動プロセスの違いをフィールドデータから捉えることは重要である．