膵液瘻防止を目指したポリエチレングリコール in situ 架橋 ゲルの開発

摘要

膵癌治療のために行われる膵頭十二指腸切除術後の 安全性は向上している一方、術後合併症の罹患率は 30~50%と未だに高い[1]。なかでも膵液瘻は膵切除後 の縫合不全を主な原因として膵液が腹腔内に漏れ出る ことにより多臓器不全や腹腔内出血を引き起こし、最 悪の場合患者を死に至らしめる重篤な術後合併症であ る。しかし、膵液瘻を予防する医療材料は存在しない。 そこで本研究では末端にチオール及びアクリレートを 有する多分岐ポリエチレングリコール[2]を用いた新規 の膵液瘻防止材料を開発することを目的とした。膵離 断面上で両者を混合し、マイケル付加反応によりin situ 架橋を起こすことで膵離断面を被覆し、膵液瘻 を防止することを目的とした(図1)。