触媒表面の塩基性制御によるギ酸からの重水素ガス選択合成とトンネル効果

摘要

近年水素が次世代のエネルギーとして注目され， その運搬·生成方法として触媒によるギ酸分解反応(HCOOH—H2 + CO2)が有望視されている。本研究では，シリカ担体に異なるアミノ基を修飾した表面塩基性の異なるPdAg合金触媒を用いることで，重水(D20)中でのギ酸の分解反応により発生するHDとD2ガスの選択性を制御できることを見出したu。例えば，強塩基性トリェチルァミン基で修飾した触媒は，HDが80%の選択性で、ー方，弱塩基性フエニルァミン基を修飾した触媒では，D2が87%の選択性で得られる。また化学反応における量子トンネル効果の存在·影響が近年研究されている。本研究では，速度論的解析及びDFT計算により，PdAg表面上のH/D交換反応において水素のトンネル効果が支配的であることが示唆された。