分散剤フリー条件下でのチタン酸バリウムナノキューブの合成 及び二液相分離を利用した集積化

摘要

ナノ材料は、大面積の表面または界面に起因してユニークな化学的·電気的特性を示すことが知ら れている。例えば、二種類のペロブスカイト薄膜を交互にエピタキシャルに積層させることで、その界面に 発生する歪が大きな誘電応答に寄与することが報告されている[1]。我々の研究グループでは、この異種ペロ ブスカイト相のエピタキシャル界面における歪を最大限に活用した誘電材料の開発を目指し、同サイズのキ ューブ状ナノ粒子の合成、またそのナノキューブ粒子が面同士を接合し交互規則配列した集積体の作製を試 みてきた。我々のグループでこれまで研究を行ってきたチタン酸バリウム（BaTiO3、BT）は、前述のように ナノキューブ粒子を規則的に集積させ、高密度にエピタキシャル界面を導入することで大きな歪がBT ナノ キューブ界面において発生し、誘電特性および圧電特性の大幅な向上が期待できる。また、実際に界面活性 剤を用いたBT ナノキューブ粒子による三次元集積体が高い誘電特性を示すことが報告されているが、この 場合、BT ナノキューブ粒子表面に吸着した界面活性剤が隣接するナノキューブ粒子との接触を妨げるため、 ポストアニール処理により界面活性剤を除去する必要がある[2]。そこで、本研究では界面活性剤を用いずに 均一なBT ナノキューブの合成を行い、その集積化を試みた。ディップコートを用いた集積方法では、毛細 管力により規則配列した集積体の形成が期待されるが、多くの場合、薄膜として得られるために大面積化· バルク化が困難であり、用途に制限が生じる。そこで、二液相分離を利用した集積方法を用いたところ、BT ナノキューブの集積体がバルク体として得られたため、その微構造観察と誘電特性の評価を行った。