フッ素置換した Mg-Al 型層状複水酸化物(F-LDHs)の イオン交換選択性に与える層間水の影響

摘要

層状複水酸化物(LDHs)は，一般式[M2+ 1-xM3+ x(OH)2] [An- x/n·yH2O]で表される化合物である。正に帯電 した水酸化物基本層と，アニオンおよび層間水からなる層が交互に積層した構造をもつ。アニオンは水酸化 物基本層の電荷補償として挿入されており，溶液中のアニオンとイオン交換できる。そのため，硝酸イオン やヒ酸イオンといった有害アニオンに対する吸着材として注目されている。これまでに，イオン交換選択性 については，基本層の金属カチオンの組成について調べられており，代表例として，宮田らにより，Mg-Alや Zn-Al からなる LDHsの示す選択性は，OH- > F- > Cl- > Br- > NO3 - > I- の順番に小さくなると報告されてい る。しかし，組成の違いによる選択性の変化はほとhどな。他の例として，基本層の層間距離とアニオン種 の半径との相関性が重要との報告もあるが，明確な答えは出ていない。層間のアニオン種は基本層の水酸基 と水分子との水素結合により相互作用しており，そのバランスのもとで層間内の安定な位置を占めている。 発表者らは，これに着目し、基本層の層電荷密度および，LDHsの水酸基を電気陰性度の異なるフッ素原子で 置換することで選択性が変化することを報告している。本研究では，イオン交換前後における LDHs の赤外分 光およびラマン分光分析を通して，アニオン種と LDHsとの相互作用およびアニオン種の違いに対する層間水 の構造変化を捉えることでイオン交換選択性の起源を明らかにすることを目的とした。