液中レーザー溶融法によるマグネタイト含有 リン酸カルシウム球状粒子の one-pot合成

摘要

マグネタイト（Fe3O4）を含むリン酸カルシウム球状粒子は、マグネタイトに由来する磁性とリン酸 カルシウムに由来する生体親和性を併せ持つ材料として、バイオ研究用磁性ビーズ、磁気温熱療法の発熱体、 核磁気共鳴イメージングの増感剤など、バイオメディカル分野において様々な応用が期待されている。中で もサブミクロンサイズの粒子は、細胞内への取り込みや血管壁の通過に適したサイズであり、利用価値が高 いと考えられている。発表者らは最近、Wang らの液中レーザー溶融法[1]を発展させ、サブミクロンサイズ のリン酸カルシウム球状粒子の one-pot 合成技術を開発した[2,3]。この手法では、光吸収剤として鉄（Ⅲま たはⅡ）イオンを添加したリン酸カルシウム反応液中に、低エネルギーのパルスレーザー光を非集光照射す ることにより、鉄を含むリン酸カルシウム球状粒子を得ることができる。本手法において、鉄イオンは、リ ン酸カルシウム析出物に取り込まれることで、析出物のレーザー光吸収と溶融·球状化を促すと考えられて いる。本手法は迅速·簡便であるものの、生成した粒子は全てアモルファス状で、マグネタイトなどの結晶 相を一切含まなかった。マグネタイトは一般的に、鉄（Ⅱ）ならびに鉄（Ⅲ）イオンを含む塩基性溶液中で 合成される。そこで本研究では、元々弱酸性であった反応液の pH を高めるために、反応液に水酸化ナトリ ウム（NaOH）水溶液を添加することで、リン酸カルシウム球状粒子中にマグネタイトを析出させることを試 みた。また、本反応におけるレーザー光照射の役割についても検討した。