電析による高強度?高延性バルクナノ結晶合金の作製

摘要

従来の強度と延性のトレードオフバランスを超える機械的特性を有するような新規材料の一つに、結晶粒を100 nm以下に微細化したナノ結晶材料が挙げられる。1989 年、Gleiter はナノ結晶材料の特異な性質として「極めて高い強度」、「延性の向上」を予見した。それゆえ、これまでに多数のナノ結晶材料の機械的特性に関する研究開発が行われてきた。ナノ結晶材料のコンセプトを実現するために、講演者は、結晶粒の微細化に加えてバルク材の作製が可能な電析プロセスに着目し、バルクナノ結晶Ni-W合金の作製を行ってきた。一連の研究開発において、バルク材を効率的に作製可能な新規なNi-W電析浴を開発した。さらに、電析条件の検討を行うことで、10%を超える引張伸びを示す高延性バルクナノ結晶Ni-W合金の作製を可能にしている[1]。同時に、高延性バルクナノ結晶Ni-W合金において(200)面への配向度の増加にともなって引張伸び値が向上する傾向を見いだした。そこで、本研究では、電析バルクナノ結晶Ni-W合金における配向性の影響について詳細な調査を行い、高延性電析バルクナノ結晶合金を得るためのガイドラインを構築することを目的とした。