(162-0367)イットリア安定化ジルコニア正方晶薄膜における正方晶-単斜晶相変態のTEM 内その場観察

摘要

ジルコニア(ZrO2)は室温では単斜晶構造が安定であるが、Y2O3 などの希土類酸化物の添加によって高温相である正方晶構造の安定性を向上させることができる。多結晶体中において室温で正方晶構造を準安定的に保持したものは特に正方晶ジルコニア多結晶(TZP)と呼ばれており、極めて高い靭性を示すために、種々の構造材料として応用されている。この高靭性は、正方晶-単斜晶相変態に伴う5%程度の体積膨張に起因するとされている。具体的には、正方晶粒内に亀裂が発生すると、亀裂先端の局所応力場によって正方晶-単斜晶相変態が誘起され、周囲から圧縮応力を受けた亀裂がその進展を止めるものと考えられている。しかしながら、正方晶-単斜晶相変態の動的挙動に関する報告は極めて少なく、そのメカニズムについては不明な点が多いのが現状である。そこで本研究では、ジルコニアにおける正方晶-単斜晶相変態の動的挙動の観察を目的として、TEM 内ナノインデンテーションその場観察実験を行った。