ソーラー電力セイルによるトロヤ群小惑星の科学探査と 搭載観測機器

摘要

ソーラー電力セイル（SPS）ミッションは1)，大面 積太陽電池と高性能イオンエンジンの組み合わせに よる超低燃費な推進系を構築することにより，原子 力電池の搭載なしで外惑星系の直接探査の実現を目 指している．その最初の探査ターゲットは，木星ト ロヤ群小惑星である．太陽と木星のラグランジュ点 付近にあり，長期間にわたって軌道が安定なこと， 太陽系の雪線（氷が安定に存在可能な温度環境の限 界線）の外側に位置することから，太陽系初期の揮 発性に富む始原的物質を直接調査できると期待され る．SPS ミッションでは，木星トロヤ群小惑星を探 査機から遠隔探査を実施し，グローバルな特徴を調 べる．次に着陸機を下ろし，表層物質を直接観察? 分析する．さらに試料を地球に持ち帰るサンプルリ ターンもオプションとして検討している．本計画は， NASA のDiscovery で選定されたトロヤ群小惑星をマ ルチフライバイによって多様性を調査するLUCY 計 画2)と科学的に相補的であり，連携して議論を進めて いる．以下では本計画の科学観測の概要と，搭載観 測機器の現状について報告する．