ウォリントン·シール形鋼心ワイヤロープの疲労損傷に及ぼす張力の影響

摘要

移動式クレーンの動索として使用される鋼心ワイヤロープは，シーブ（滑車）を通過する度に繰返し曲げを受け，フレッティング疲労によって素線が断線し，引張強度が低下する．このため，一よりにおいて総素線数の10%が断線した時点で廃棄することが定められている．しかし，ワイヤロープ内部の疲労損傷を適切に評価することは困難であり，ワイヤロープ表面の可視断線数によって疲労損傷を評価しているのが実状である．著者らはこれまで，フィラー形鋼心ワイヤロープでは，ワイヤロープの張力によって内部損傷量に大きな差が生じ，可視断線数から疲労損傷を評価することが困難であることを明らかにした．ウォリントン·シール形鋼心ワイヤロープは，フィラー形鋼心ワイヤロープに比べ疲労特性に優れるが，張力が疲労損傷に及ぼす影響は明らかでない．そこで，本研究は，ウォリントン·シール形鋼心ワイヤロープについて，異なる張力下でS字曲げ疲労試験を行い，張力が鋼心ワイヤロープの破断寿命および素線断線に及ぼす影響について検討した．