ガラスレンズのモールドプレス成形に関する数値シミュレーション

摘要

近年，光学分野の発展に伴い，光学特性の優れた光学デバイスへの注目が集まっている．特に，高解像度が要求される一眼レフカメラや液晶プロジェクタなどにおいて強度·屈折率·耐熱性の点で優れた特性を有するガラスレンズが主に使用されている．また，様々な光学機器の発展に伴い，レンズの小型化や性能向上のため，非球面レンズが積極的に用いられている．しかし，従来の非球面レンズの成形方法である研削·研磨において，非球面形状を削り出すには非常に手間と時間がかかるため，製造コストが高いことが欠点であった．これらの問題を解決する手法として金型を用いたモールドプレス成形が注目されている．モールドプレス成形とは上下型からなる成形金型にガラス材を供給し，加熱する．その後，圧力を付加することで金型形状をガラス材に転写する成形法である．しかし，ガラスは応力とひずみの関係が温度と時間に依存する熱粘弾性体であるため，成形温度や成形圧力，冷却時間などの考慮すべきパラメータが多く，実験により最適成形条件を探索することは多くのコストと労力が必要となる．そこで本研究では，有限要素解析を用いてガラスのモールドプレス成形の最適成形条件を評価することを目的としている．数値解析に先立ち，様々な温度環境下において一軸圧縮クリープ試験を実施し，ガラス材料の熱粘弾性特性の導出を行った．得られた熱粘弾性特性を用い，非球面レンズのモールドプレス成形に関する数値解析を実施する．また，完全転写を実現するための最適な成形温度，成形圧力を調査する．その後，冷却時間がレンズに与える影響について調査する．