(J67-1277)高Mn オーステナイト鋼における熱誘起?マルテンサイトにおよぼす水素の影響Effect of Hydrogen on Thermally-Induced ?-Martensite in High Mn Austenitic Steel

摘要

鉄鋼材料のマルテンサイト変態挙動に対して固溶水素が影響を与えることは今まで多く報告されてきた．いくつかの報告はオーステナイト系ステンレス鋼に対してX 線回折法を用いた研究であり，電解陰極チャージによるepsilonマルテンサイトの生成や格子の膨張，alpha′ピークの消失などが報告されている．1-3) また,第一原理計算を用いて算出したFe-H 系のgamma-alpha自由エネルギー曲線から, 水素の固溶による相平衡温度の低下が報告されている．4) このことから，水素がマルテンサイト変態に影響を与えていることは明らかである.しかし，水素の固溶による自由エネルギーや積層欠陥エネルギーの変化，格子ひずみなどの影響因子が，どのように作用することで変態挙動を変化させているのかは未だ不明である．そのため，水素脆化発現の一因としても知られる水素誘起変態への理解は定性的なものに留まっている．本研究では室温下でgamma→epsilon変態を引き起こす高Mn オーステナイト鋼を用いて，固溶水素がマルテンサイト変態挙動へおよぼす影響を調査した．またgamma，epsilon二相状態の材料中における水素拡散について調査した．