都心型漁業を核としたまちづくりに関する研究: 社会実験からみる大田区?漁業?の位置づけ

摘要

わが国における第ー次産業の全般的な衰 退(所得低迷、高齢化、後継者不足等)が叫ばれて久しい。 特に?都心型漁業(大都市都心の漁業)?については、昭和 53 年に2500 人を上回る漁業従事者が約30 年の間で著し く減少し、今や風前の灯となっている(表－１)。これに つき、本研究対象地の東京都大田区羽田地区(図－１)も、 海老取川を拠点として、現在も都心型漁業が営まれてい るが、漁場の著しい環境悪化(ヘドロの堆積)や漁業従事 者減少といった、都心部の典型的な漁業環境問題を抱え、 その存続は脅かされる状態にある。だが、東京都心部の ような急激な都市化の過程のなかでも、都心型漁業は生 存し、周辺海域では豊富な海産物も捕獲でき、このよう な漁業風景の存在は?まちの表情の多様性?や?地域のアイ デンティティの醸成?に資する等、さまざまな効用を周辺 地域にもたらす可能性があるため、今後は新たなまちづ くりの核のーつとして注目していくべきであろう。