ユビキタス環境下における超分散生産システムシミュレーションに関する研究（第1報）－超分散シミュレーションのための時間管理機構

摘要

生産システムをはじめとして，多くのシステムのシミュレーションに離散型イベントシミュレーション技法が使われている．これはシステムを構成する要素の状態変化を起こす事象と時点に注目したものであり，その事象の生起を時間軸に沿って追跡し，どのような状態変化が起こるかを明らかにすることにより，システムの特性を明らかにするものである．基本的には対象システムを一台の計算機上に一つのシミュレーションモデルとして構築し，実行する[例えば1]．近年では対象システムの取り扱う範囲の大規模化にともない，部分システムのモデルを複数台の計算機上に構築し，それらを結合することによって，全体システムのシミュレーションを行う分散シミュレーションも考えられている[2]．本研究ではこれまでの考え方とは全く異なる超分散シミュレーションについて考える．対象システムの構成要素がそれぞれシミュレーションに必要な最小の機能を有しており，それらがネットワークを介して相互に連携して全体システムとしてのシミュレーションを実行するという状況を考える．これは近年の情報通信技術（ICT）の発展に伴い，システムを構成する各要素が情報の送受信能力を有するようになり，ユビキタスな環境が整備されてきていることに発想したものである．まず離散型イベントシミュレーションについて概観した後に，超分散シミュレーションを実行するために不可欠な時間管理機構[3]を提案する．