将来世代における製品の形状変化に対応したアップグレード設計支援

摘要

製品の長寿命化は，製品のライフサイクル全体における資源使用量や廃棄物量の削減に向けた有効なアプローチの一つである．しかし，長寿命化のためには，物理寿命の長寿命化だけでは十分ではなく，価値寿命の長寿命化を考慮することが重要である．ここで価値寿命とは，技術の進歩や消費者の嗜好の変化などにより，製品機能·性能が陳腐化し，物理的には故障していない製品が廃棄されてしまうまでの時間のことである．本研究では，この価値寿命を延長するための設計技術の一つとしてアップグレード設計に着目する．アップグレード設計は，製品機能の陳腐化の抑制手段として，消費者の要求に応じて製品機能をアップグレードすることで，廃棄される要因を排除するための有効な手法である．しかし，アップグレード設計は多世代にわたる製品を扱うため，将来の技術や市場を適切に予測しなければならず，そこには将来世代の製品機能や構造·形状に関する不確実性が存在する．著者らは，この不確実性の範囲を「アップグレード計画」によって表現する手法を提案している[2]．本研究では，製品の幾何形状を対象としたアップグレード設計に先立ち，このアップグレード計画が既に策定されているものとし，この計画に基づく部品の追加·交換に柔軟に対応し，将来の各世代におけるアップグレードを可能にする製品構造や形状を設計するための支援手法を提案する．