可動子にコイルを搭載した共振型静電誘導モータにおけるコイル間相互誘導の駆動特性への影響

摘要

筆者らは，高出力の静電モータである交流駆動両電極形静電モータ[1]について研究を進めている．同モータは，微細な帯状電極の埋め込まれたフィルム状の固定子および可動子からなり，双方に周波数の異なる高電圧多相交流を印加することにより駆動される同期モータである．これまでに筆者らは，上述のモータと同様の電極構造を用いて，非同期で駆動するモータ（以下共振型静電誘導モータ）を実現している[２]．このモータの特徴は，可動子電極に接続されたコイルとの電気的共振を利用して可動子電極の電圧を昇圧し，交流駆動両電極形静電モータと同等の大きな推力と非同期モータ特有の速度－推力特性とを両立できることにある．共振型静電誘導モータにおいては，可動子電極に電圧を印加する必要が無いため，コイルを可動子上に搭載することによってモータの可動部を無配線化することが可能である．この様なモータにおいては，コイルを密接して配置する必要があるためにコイル間に相互インダクタンスを生ずる場合があるが，その駆動特性への影響はこれまでに明らかにされていなかった．そこで本稿では，三つの空芯コイルを可動子に搭載した直動の共振型静電誘導モータを試作し，コイル間相互誘導の駆動特性への影響を調べた結果について報告する．