受容体理論による縫線核セロトニン神経のモデル化と解析

摘要

我々の脳幹に位置するセロトニン(5-HT) 神経は脳の広範囲に軸索を伸ばし，各部位の機能を調節している．投射先としては，例えば恐怖情動を司る扁桃体(Amyg) や認知機能に関与する内側前頭前皮質(mPFC)，前帯状皮質(ACC) があり[1]，セロトニン神経の異常は情動障害や認知の歪みに繋がると考えられている[2]．また社会的敗北(social defeat) に対する恐怖情動を抑制する役割や協力的行動を促進する役割も果たしていることが指摘されており[3]，セロトニン神経の異常によりこうした役割が失われることが社会的な適応障害に繋がると考えられる．セロトニン神経の進化的な発生は古く，ヒト以外の多くの動物においてもセロトニン神経の構造はヒトと類似していることが指摘されている[4]．また社会的な適応性の調整という機能的側面についても類似していることが指摘されている[5]．