伝達関数モデルを用いたモートン効果による振動現象とすべり軸受のL/D比の関連性

摘要

近年，世界的な人口の増加に伴い，エネルギー消費量が増大している．それに対応するため，ポンプなどを始めとする回転機械は高効率化や大容量化が要求されている．これらの要求に答える手段として，回転速度の向上がある．しかしながら，回転速度が高速になるにつれて機械に発生する振動が問題となることがある．より高速で回転する回転機械を実現するために，設計者は振動を抑制できる設計にする必要がある．回転機械の振動の原因の一つに，モートン効果と呼ばれる現象がある．モートン効果は近年着目されている現象で，研究報告も多くなっている．モートン効果は潤滑油によって回転軸を支えるすべり軸受において機械振動，流体，熱が複合して発生し，この性質は解析を難しくしている．モートン効果の従来研究には大きく分けて2つのアプローチがある．一つは理論モデルに基づいたシンプルな手法である．シンプルな手法では回転動力学にモートン効果による加振力を新たに加え，これを解析的に解くことで不安定領域の推定を行う．もう一つは数値解析に基づいた高精度な手法である．計算機を用いてTHD（Thermo HydroDynamics）やCFD（Computer Fluid Dynamics）によって数値的に解析する．この手法の場合，機器ごとの挙動はよく予測できることが報告されている．しかし，多くのケーススタディが必要であることや計算コストが大きいといった欠点を持つ．また，いずれの手法の場合でもモートン効果の予測モデルの構築に主眼を置いており，実際の回転機械の設計がモートン効果に及ぼす影響についてはあまり注目されていない．