新幹線車軸の蛇行動の正確な定式化により減衰特性および安定性の評価

摘要

新幹線の速度をさらに向上させるためには車軸を含めて車両のさまざまな要素と蛇行動との関係をより深く調べることが必要である．車軸の動的蛇行動を示す特性方程式は微分演算子の四次式になるので，固有振動数や減衰特性の定式化が困難である．先行研究では車軸において蛇行動の固有振動数の定式化を行ったが，慣性力を無視した幾何学的蛇行動の場合，減衰項が抜けている．慣性力を無視していない動的蛇行動では、クリープ係数比（横方向のクリープ係数と縦方向のクリープ係数との比） f および無次元化接触幅（車輪接触間距離2bとヨー慣性直径2R_zとの比）b に関してさまざまな仮定（例えば，b≌ f ≌ 1，あるいは(b~2≌f )~2 ≌ 0 ）を使用した上で固有振動数や減衰特性の定式化が得られた．具体的には，四次特性方程式（四次多項式）の係数の一部近似により二組の共役複素根を求めたが，一組の共役複素根では不安定な蛇行動に関係していない正減衰比，他組の共役複素根では蛇行動に関係している負減衰比が得られた．しかし，動的蛇行動の正確な定式化を行うと，二つの負の実根と，正の実数部を持つ一組の共役複素根が得られるべき．つまり，蛇行動のモデル化の不具合によりレールと車輪との接触で起こるクリープ現象とダンピングとの関係性が正確に記述されていない．そこで，本研究では車軸の動的蛇行動に着目し，減衰固有振動数および減衰比の正確な定式化を行い，新幹線の車軸とレールとの接触で発生する蛇行動の減衰メカニズムを解明し，車軸の安定性を評価する．