不規則な時間遅れを伴う観測システムを通したシステムの状態推定

摘要

近年，通信ネットワークを介したセンシングや制御が注目され，多くの研究が進められている．情報通信ネットワークには，ローカルエリアネットワーク（LAN）と広域エリアネットワーク（WAN）に大別されるが，何れもパケット通信を用いた離散時間的なシステムである．LANを介したフィードバック制御やセンシングシステムは，あらゆるデバイスがネットワークに接続され，その論理的な接続を柔軟に変更できることが特徴である．一方，WANでは遠距離での通信が可能であり，インターネットを介すれば地球規模での通信が容易に実現できる．WANを用いれば遠隔制御，遠隔操作が独自に通信インフラを用意することなく実現することが可能である．LANおよびWAN何れも，コンピュータを介してネットワーク化されており，そのため情報の伝送遅延を伴う．特にインターネットでは，不特定多数のユーザーが様々なデータ通信を行っており，回線スピードやその瞬間の伝送量もまちまちである．これに起因して，データの伝送遅れは一定ではなく，その時々において不規則にに変動することが分かっている．通信インフラとしては有用ではあるが，安定した通信環境として取り扱うことは困難である．