パラメータ同定が容易で制御系設計に直接利用可能な船舶運動モデルの提案－制御実験による検証

摘要

船舶の運動モデルについては数多くの研究がなされており,代表的なモデルとして船体の回転運動を一次系で表現した野本らによるモデルや船体の並進運動と回転運動を詳細に表現したBerlekomらによるモデルが挙げられる.野本らによるモデルは制御系設計に有用であるが,船体が水面から受ける非線形な流体力は考慮していない.一方Berlekomらによるモデルは非線形な流体力を詳細に考慮しているが,その構造が複雑なため,正確なパラメータ同定が困難であるという問題点がある.そこで1)船体の非線形運動を考慮,2)モデルの複雑さを低減,3)パラメータ同定が容易,4)制御系設計に有用,という4つの特徴を有する船舶運動モデルの構築を目指し,野本らのモデルとBerlekomらによるモデルの間の中間的な船舶運動モデルを提案する.提案する船舶運動モデルでは,船体が流体から受ける非線形な力やモーメントが速度の2乗に比例する項が支配的であると仮定する.模型船舶を対象とするシステム同定を行ない,同定モデルの制御系設計における有用性を検証するために,模型船舶を用いた実機実験を行なう．