近年の溶接鋼構造物における脆性破壊防止技術の進歩

摘要

溶接構造物の脆性破壊は、第2次世界大戦中に停泊中の全溶接船が真冬の朝に脆性破壊を起こした事例などを始めとして、まず低温下における低応力での脆性破壊発生現象に注意が払われた。その後、破壊力学や冶金的な面からの脆性破壊防止の考え方が発展、定着し、設計応力条件での脆性破壊事故は大幅に減少した。ところが、近年では兵庫県南部地震の際に多数の建築鉄骨において脆性破壊現象が確認され、これを契機に地震による大変形や動的繰返し負荷による脆性破壊についても注目されるようになり、大変形や動的繰返し負荷を考慮した評価技術や破壊防止技術が大幅に進歩した。また、低温貯槽タンクや船舶分野では古くから材料や構造の面から脆性破壊の発生防止や発生後の脆性亀裂のアレストについてが考慮されてきたが、近年のコンテナ船の大型化に伴う使用鋼材の極厚化によりあらためて脆性破壊の伝播防止技術が注目され、脆性亀裂のアレスト特性に対する新しい基準が制定されつつある。