タービンブレードとして長時間実機使用した一方向凝固Ni基超合金のミクロ組織

摘要

近年卜民用航空機の大型化高性能化および地球環境への負荷低減要求に対応するため，ジェットエンジンのさらなる高出九高効率化が求められている．ジェットエンジンの出力および効率は燃焼ガスの温度に強く依存し，タービン入口温度（TIT）は上昇の一途をたどっている．TITの上昇には第一段高圧タービンブレード（以降，ブレードとする）に適用されているNi基超合金の耐用温度の上昇が必要不可欠である 。さらに，安全性および経済性の観点からブレードの余命推定技術の確立が急務となっており，実機稼働環境の把握が重要である．しかし，稼働中のブレードは高温下で高速回転しているため，稼動中の温度と応力の実測は困難である 。そこで，Ni基超合金の強化相であるγ’（Ni（Al－Ti））相の形態の変化に関する知見に基づいたブレードの使用環境を推定する研究が注目されてきた　Ni基超合金のγ’相は，高温下で引張クリープ変形を受けると応力軸に対して垂直に板状のラフト構造を形成する．一方，高温にて単純時効を施した場合，γ'相は凝東粗大化する．この知見に基づき，著者らは低バイパス比ジェットエンジンにて高温短時間実機使用した単結晶Ni基超合金のブレードについて，詳細に組織観察した結果，γ’相の形態より，中央部背側リーディングエッジおよび腹側リーディング，トレーリングエッジで最も高温，高応力に曝されていることを示した.