イットリア安定化ジルコニアのアニール劣化に及ぼす高応力の影響

摘要

現在地球温暖化は深刻な問題となっている．そのため燃料電池の開発·導入が期待されている．燃料電池の一種である固体酸化物形燃料電池(SOFC)は高い発電効率を実現することができることからその実用性が期待されている．一方，その出力性能が劣化することが知られており，実用化にあたり問題となっている．構成材料自身の劣化に加え，劣化の一要因と考えられているのが熱応力の影響である．SOFC は空気極，燃料極，電解質と異種材料の積層により構成され，それらの熱膨張率の違いから内部に数百MPa の内部応力が存在することが報告されている．従ってこの内部応力が電解質の伝導率ひいてはSOFC の出力性能に影響を与えることが懸念されている．本研究では，SOFC の電解質として広く用いられている8mol%イットリア安定化ジルコニア(8YSZ)の高応力負荷下でのアニール試験を行ない，アニール前後の試験片について，顕微ラマン分光解析，インピーダンス測定，走査型電子顕微鏡観察を行い，高応力が8YSZ の劣化挙動に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする．