ジュート繊維強化複合材料の引張りクリープ特性に及ぼす表面処理の影響

摘要

ガラス繊維強化プラスチック（以下GFRP）は高い比強度，比剛性を有し，耐腐食性に優れるため，自動車部品や船舶，浴槽などの幅広い分野に応用されている．しかし，GFRP はリサイクルが非常に困難で，廃棄処理が高コストであり，また廃棄に際して二酸化炭素などを発生するため，環境への負荷が問題視されている．この解決策として，GFRP の代替として強化材に天然由来の繊維を，母材に熱可塑性樹脂の生分解性樹脂を用いた環境負荷が比較的小さいグリーンコンポジット(以下GC)が注目を浴びている．しかし，GC は天然由来の複合材料であるので，一般に機械的特性が低く，母材と強化材の界面接着性が乏しい等の問題点が上げられる．界面接着性の低さは含浸不足，界面はく離などにつながり，材料の強度等に影響を及ぼす．その問題点を改善するために，GCに対して様々な化学的手法が施されている．中でも，界面活性剤を強化材の表面に施すことにより，界面接着性を向上させた研究報告がある． また，GCを実際に自動車の内装などに使用する場合，物体にかかる長期的な自重によるクリープ変形を考慮する必要がある．さらに，自動車内は温度変化が激しく，炎天下では60°Cを超えることもある．従って，様々な温度環境に対するGC のクリープ変形，クリープ特性を分析し，長期的な安全性を把握する必要性がある．そこで本研究では，天然繊維の一種である平織りジュート繊維にシランカップリング剤を添加し，母材にポリ乳酸（以下PLA）を使用したジュート繊維強化複合材料の引張クリープ試験を行ない，クリープ特性に及ぼす表面処理の影響を評価した．