室工大小型超音速飛行実験機の姿勢変化レートによる動的空力特性のCFD 解析

摘要

近年，次世代型の超音速輸送機や完全再使用型宇宙輸送機の開発気運が世界的に高まってきている．これらの開発には実飛行条件下での技術実証が必須であるが，超音速飛行試験に供することができるフライングテストベッドは国内外を問わずにその数が少ない．室蘭工大?航空宇宙機システム研究センターでは，大気中を高速度で飛行するための革新的な基盤技術を創出する研究開発を推進しており，地上で研究された基盤技術を小規模ながらも実際の高速飛行環境で実証するための小型超音速無人飛行実験機（愛称:オオワシ）の研究開発を進めている．これまでに，ターボジェットエンジン2 基を搭載する亜音速飛行実験機?第一世代オオワシが2009 年度に設計?製作され，2010 年度および2011 年度にこの機体を用いた飛行試験が実施された．現在では，超音速飛行に一層適したガスジェネレータサイクルエアターボラムジェット（GG-ATR）エンジンを一基搭載し，離陸?上昇?マッハ2 程度までの加速?上昇?帰還飛行?着陸までの一連の飛行を無人で可能とする第二世代オオワシの設計?開発が進められている．そのM2011 空力形状についてCFD (Computational FluidDynamics) 1)およびEFD (Experimental Fluid Dynamics)2)によって動的空力特性が評価されている．この動的空力データはオオワシの飛行性能予測のための6自由度飛行経路解析や，自律的姿勢制御系の設計に欠かすことができないものである．しかし，CFDとEFD では得られた動的空力微係数の一致度はまちまちであったことから，空力微係数の生成メカニズムにまで立ち入った詳細な解析の必要が生じた．そこで，本研究ではロールレートを与えた場合のCFD解析結果について，CFD とEFD との空力微係数の比較検証に加えて，流れ場および圧力分布の可視化を実施し，流体力学的メカニズムの観点から動的空力微係数 _( )（ロールダンピング）および _( )（アドバースヨー）を評価することを狙う．