海洋資源調査を目的とする探査機複合観測システムの開発

摘要

現在，科学技術の新分野への進捗を目指し，組織·分野の枠を超えた包括的マネジメントを展開することにより，科学技術イノベーションを具現する「戦略イノベーション創造プログラム（Cross-ministerial Strategic Innovation Promotion Program：SIP）」が進められている．そのうち「次世代海洋資源調査技術」では，我が国の経済水域に存在する多くの海洋資源域を，効率的かつ効果的に調査する実用化技術について取り組hでいる．なかでも「ケーブル式観測システム」では，特に海底資源域の周辺環境を総合的に把握する要素技術の確立が求められており，そのモデルケースとして伊豆大島南方沖の海底に位置する大室ダシ周辺の海底熱水域にケーブルネットワークを敷設し，その終端装置に観測ノードを配置することで，当該海底域の長期的な環境観測を目的としている．現在，このケーブルネットワークの観測ノードのひとつとして，海中探査機を適用した「探査機複合観測システム」の構築を進めている．当該システムでは，海中探査機を移動式の観測ノードと捉え，ケーブルネットワークに連結される海底充電ステーションを基地局として，海中探査機が長期的かつ周期的な観測ミッションを実施すること目的としている．これにより，定置式，移動式の各観測ノードが同時に展開されるケーブル式観測システムが確立される．本稿では，「探査機複合観測システム」の概要を示すと共に，現在開発を進めている自律機能における行動規定（ミッションシナリオ）について言及する．