太陽光型植物工場のむだ時間を考慮したモデルにもとづく細霧発生による水蒸気飽差制御

摘要

現代社会が持つ喫緊の課題として，食の安心安全，農作物の安定した生産及び品質の安全性，信頼性の確保が求められている．その解決策として植物工場が挙げられる．植物工場は温湿度やCO_2濃度，光強度などを制御可能な人工光型および太陽光型の生産設備である[1]．著者らは，安定してノイズ変動のない環境情報の計測とクラウドデータベース化を提供する統合環境計測制御システムANTS （Active-Sensing Networks and Telexistence System）を研究開発している［2］．太陽光利用型植物工場や農業温室など，日本の施設園芸における高品質，高収量生産を実現するために解消すべき問題の一つに，夏季の高温による生長抑制および収量の低下が挙げられる．室内気温を調整し，夏季生産を安定させる目的で低コストである細霧冷房が用いられている．現状では日本全体の施設園芸設備の2%（1000[ha］）程度しか設置されておらず，環境の最適化による収量の増加に繋がった例は少ない［3］．その理由に，室内環境や植栽によって噴霧する粒子径や噴霧水量が最適化されておらず，噴霧された水が十分に蒸発しきらないまま植物体に到達してしまう点が挙げられる．従来の細霧冷房はタイマによるオン·オフ制御が行われていたが，日射強度などを考慮していないために理想的な栽培環境を得ることが難しかった