小型飛行機製作とインターンシップを組み合わせた航空機人材育成事業の実施について

摘要

工業高等学校で加工実習される鋼材に比して柔らかいアルミ合金の加工は未経験であった．融点が低く難度の高いアルミ合金の溶接実習を集中的に受けることができた． 3 日間という短期間であったが，NASTRAN の習得は比較的容易であった．自動車産業に代表される大量生産とは異なる少量生産の現場見学も刺激を与えた．いずれも日頃学校では体験できない内容であり，航空機産業の理解増進に大きく貢献した．その結果，2011（平成23）年4 月には名市工機械科3 年生7 名のうち2 名が航空機製造関連企業に就職，1 名が航空専門学校に進学した．また，受講者以外の生徒も間接的に航空機産業への関心が高まったと実感する．本事業は単年度のものであり2011（平成23）年2 月に終了した．一人乗り小型飛行機の完成と完成後の機能確認，すなわちジャンプ飛行実験などは，本事業終了後の自主事業として位置付けられた．現在，名古屋市立工業高校の4 名の担当教諭の指導の下，新年度から新たに加わった12 名の新3 年生メンバーを中心に，機体の細部の検証と手直し作業に入っている．国交省の許可を得て2012（平成24）年5 月にジャンプ飛行実験を計画している．注および引用文献1）馬渕浩一,「二宮忠八関連資料の所在調査と工業高校生人材育成事業への展開」，生涯学習·キャリア教育研究，名古屋大学大学院教育発達科学研究科附属生涯学習·キャリア教育研究センター, No.7（2011），pp.35-39. 2)二宮忠八はわが国最初期の飛行機の考案者であり，1866（慶応2）年，現在の愛媛県八幡浜市に生まれた．1891 （明治24）年，香川県仲多郡まhのう町で，滑空するカラスをヒントにゴム管，プロペラ，3 つの車輪からなるカラス型模型飛行器（二宮は「飛行器」と命名した）を完成させ，約10m の実験飛行に成功した．固定翼の着想が注目される．1902（明治35）年，京都府八幡市にて有人の玉虫型飛行器の製作を再開したが，1903（明治36）年12 月17 日，ライト兄弟が世界初の有人動力飛行実験に成功した報に接すると落胆し研究を断念した．