分岐を考慮した腕部血管系一次元数学モデルにおける脈波の反射の検証

摘要

中国伝統医学の一つである脈診は，両手首の橈骨動脈に指を押し込hで指に感じる脈波の特徴から診断を行う．この脈診は，簡便で非侵襲な診断法であるにも関わらず，疾病のほか，病気になる手前の状態である未病の診断も可能とされている．しかし，脈診による診断は基本的に医師の経験に基づいており，そのメカニズムは明らかになっていない．また，圧力センサを用いて脈波情報を得る研究も行われているが，得られる情報量が膨大であることに加えて個人差が非常に大きいため，脈波と病変との系統立った関連付けは未だなされていない．本研究室では，脈診の本質は橈骨動脈の圧閉にともなう脈波の変化にあると考え，脈診のメカニズム解明を目指して腕部動脈系の一次元数学モデルを構築してきた．その後，橈骨動脈と尺骨動脈の分岐を考慮したモデルを構築することで，橈骨動脈の圧閉による脈圧の振幅および平均値の変化に関して，実験結果を定量的に再現したが，脈波波形の再現に問題があった．そこで本報告では，脈波波形に大きく影響を与える血管の分岐部および合流部におけるモデルを改良するとともに，血管の特性インピーダンスから解析的に求めたそれぞれの点での反射係数との比較を行った．