熱電変換素子による温度差発電を伴う温泉の温度制御

摘要

温泉における高温源泉の冷却制御は，源泉湯宿の泉質保証（100%源泉掛け流し）や河川の環境保全と関連した重要な課題となっている．しかしながら，従来の適温制御は，上水の混合や単純熱交換など，高温水の持っているエネルギを捨てているため，広い意味でのエネルギ投資により行われているのが現状である．また，以上のことは温泉に限らず，工場排水の廃熱処理等においても共通の問題であり，このような質は低いが多量にある低レベル小温度差熱源の有効利用に対して，新たなアイディアの創出と利用できる技術の多様化が望まれている．温泉熱を利用した熱電発電は，近年，いくつかの地域で取り組まれており，地域興しや未利用エネルギの活用に貢献する技術として発展している．しかしながら，従来の技術は発電に特化しており，温度制御を目的としながら，その過程で発電を得るものは見当たらない．本研究は，熱電変換素子を用いて温水の持つエネルギを温度差発電により取り出しながら自動温度制御を行う新規の熱交換システムを提案するものであり，その実用化の可能性について追求するものである．これまでに，汎用の熱電発電モジュールの伝熱·発電特性を,温度制御の手段となる温度差発電のオン/オフと関連づけて明らかにしてきた．本報では，比較的小型のポータブル自動温調装置を製作し，本システムの妥当性を検証するとともに，その基本特性について評価と検討を行ったので報告する．